DATE 2009. 9.23 NO .



「これで……」

 少年は異形の少女を組み伏した。
 ダン、と少女の身体が床に打ちつけられる。
 浅くはない裂傷や火傷を身体中に抱える少年は、身体の痛みではなくその音のために歯を食いしばった。

「終わりにするから…っ!!」

 剣を床に突き立て、少年は錆びたような色をした頭環に手を伸ばす。
 飾り気のない、鈍く光るそれは、だがしかし溢れんばかりの力を誇る彼女を縛り、その額で異様なまでの存在感を放っていた。

 かん からから……

 むしりとり投げ捨てた頭環は、途端にその存在感を失った。
 乾いた音をたて無様に転がった塊の事など、もはや少年にとってはどうでもいい事で。

「ティナ!!」

 無機質な音が塔内に響き渡ると同時に元の姿へと戻った少女の身体を抱き起こし、そのあたたかな鼓動を感じて安堵した。

「あ――」

 少女がゆるりとまたたき、かすかに呟いた。

「良かった……」

 少年は精一杯微笑んだ。

「帰って来てくれて…ほんとうに…っ!」

 小さなガラス片が無数に刺さった頬は、ひきつれた笑みしか許さなかったけれど。

「大丈夫、一緒に行こう」

 少女を励ますために、少年は、力強く、ささやく。

 少年の仲間は誰も、少女もその一員であった事を覚えていない。
 少年は独り、記憶の中で微笑む少女を取り戻すべく、戦い続けてきた。

「さぁ」

 ようやくスタート地点に立った。
 今までの辛い道のりは終わり、これから、始まる。

 その想いを込めて、少年は手を差し伸べた――






「――誰がそれで終わりって言ったの?」

 ゆらりと立ち上がった少女は氷を抱く。
このままでは 独りのままだから
「…っ、そ……んな……」
あなたの居場所は私の傍じゃない
 身を守るべく少年は反射的に剣を抜き、
 少女の唐突な行動に対して本能で反応した――
あなたは仲間の元に帰り
私は次こそ 隣に立つ資格を得る

……ほら それで完成
世界平和の できあがり――







≪あとがき≫
 七個目、ティナ=ブランフォード。「6」クリアおめでとういつだったか忘れたけど!
 和題→「私がいなくなればそれで完成」+英題→「次の輪廻に賭ける彼女の選択」、みたいな。

 それが最も賢い選択
 けれど少年は 賢明である事をやめた
 きっと また――





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